本研究の目的は、外国語副作用が日常的な場面でも生じるかどうかを調べることでした。 不慣れな外国語を使用している最中は、一時的に、思考力が低下した状態になります。これが外国語副作用です。研究代表者は、言語課題と思考課題を同時に遂行する二重課題実験によって、外国語副作用が実際に生じていることを立証しました。しかし、その実験では、日常場面でも外国語副作用が生じているのかどうかを推定するためには、1つ問題が残されていました。それは、思考に伴う内言の問題です。日常的な場面(例:会話、討論)では、思考は内言を伴う可能性が強くなります。その内言は、通常、使いやすい言語、すなわち母語であると推定されます。外言で母語を使用する場合には、内言と外言が同じ言語なので干渉が大きくなり、思考力の低下が増大します。そうなると、外言が外国語の場合と差がなくなり、結果として、外国語副作用が消失するという可能性が考えられます。 本研究では、思考が内言を伴う場合、外国語副作用が消失するか否かを実験的に検討しました。言語課題としては、先の実験に用いた質問回答課題を使用しました。思考課題としては、三段論法の妥当性判断を使用しました。この思考課題には内言処理が伴うことが確実に推定されます。実験の結果、思考課題の平均正答数は、言語課題を外国語(英語)で行った場合は11.0、母語(日本語)で行った場合は13.5となり、思考課題の成績は外国語の場合に有意に低下していました。従って、思考が内言を伴う場合にも外国語副作用は生じると結論することができます。
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