研究概要 |
研究実績 開研究室は、母子間相互作用場面における脳活動計測に関して、ダブルTV環境を構築し、実験者(未婚女性)と乳児との相互作用場面における,乳児の側のEEG計測を実施した.具体的には,映像遅延装置を用いて相互作用に4秒の時間遅延が挿入される条件(Delay条件)と遅延のない条件(Live条件)におけるγ帯(20Hz-40Hz)の活動を比較した.対象とした被験児は4ヶ月から5ヶ月児23名のうち,Delay条件とLive条件をそれぞれ3セッション以上実施できた12名を分析の対象とした. 分析の結果,Delay条件とLive条件に対するEEGの分析結果に差がみられ、特に両側後側頭葉・下頭頂葉周辺の活動は,Live条件よりもDelay条件で有意に大きく活動していることが明らかになった.現状における推察として,Delay条件が,社会的な随伴性検出に関わるコストが高かったと解釈できる. 池上研では、神経ネットワークを用いた知覚の数理モデルをつくり、能動的、受動的な条件を力学系のアトラクターと関係させた。特に2つの人工的な腕を使ったシミュレーションでは、この2つの腕の間の信号伝達にdelayをいれることでアトラクアーの安定性を調べ受動的なアトラクターが能動的なものよりも不安定であるという結果を得ている。またカオス的遍歴状態と知覚の関係をしらべ、空間パターンのセンサーのなぞり方により異なるアトラクターがネットワークの内部に選ばれることを示した。また言語的な相互作用と前言語的ターンテークとの関係を論じ、どちらも不完全な随伴性(imperfect contingency)が鍵となることを議論し、イギリスでの新しい認知言語学会や駒場でのSocial Cognitionの国際会議で発表をした。
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