ヒトとチンパンジーでものの音や言語音の理解を、オノマトペを利用して、多角的に検討した。研究は4つの側面よりなる。1)ものの実際音、それを声で模したオノマトペ、ものの名称は脳でどのように受け取られるのか。2)チンパンジーは環境音を理解するが、言語音に関しては理解が悪い。オノマトペを導入することで、言語音の理解につなげることはできないか。3)日本語を母語とする乳幼児はものの名称を獲得する前に、そのオノマトペを獲得する傾向が強いが、選好注;視法でその理解の過程を捉えることはできないか。4)脳の損傷による言語理解の障害はしばしばものの理解の障害(聴覚失認)を伴う。しかし両者は乖離しており、言葉の理解は回復しないが、環境音の理解は戻ることがある。そのような症例で、オノマトペを導入することにより、言葉の理解の回復が促進されないだろうか。そのようなためのテスト、訓練法をコンピュータ上で実現することを目指した。 1については、ものの実際音、名称はそれぞれ共通する脳領域、独自の脳領域を活性化させること、オノマトペはそれらをまたがるように広範な脳領域を活性化させることがPET.fMRIにより確認された。オノマトペは実際音と名称理解の橋渡しをすると考えた。2については、1頭のチンパンジーがものの音を理解するが、その名称を理解しないことが確認された。オノマトペを導入したが、それは理解できた。3については目下データの蓄積中であるが、環境音のみ理解する乳幼児、それに加えてオノマトペを理解する乳幼児などの存在が確認できた。4についてはVisual Basicにより、ものの実際音、オノマトペ、名称の理解、訓練のための課題制御、データ収集のソフトウェアを完成させた。
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