研究課題
乳幼児において言語の獲得は目をみはる速度で非常に効率良く行われる。このような効率のよい学習は子どもが語意推論のためのバイアスを持っており、これを用いて探索スペースを制約しているためであると考えられていた。しかし、従来のこの分野での研究はほとんど環境からすでに切り離された事物につけられたラベルの語意推論を問題にしてきたところに限界があった。本研究ではこの問題にさらに踏み込み、乳幼児が日常生活の自然な状況で日夜遭遇する問題--つまりどのように切れ目のない連続的な行為を分節しているのか、どのような手がかりをつかって文の中から名詞、動詞、形容詞などのことばの品詞を同定しているのか、それぞれの品詞のことばをイベントのどの部分に対応させ、どのように他の状況にそのことばを汎化していくかという問題--を彼等がどのようにして解決しているかについてのメカニズムを、総合的、大局的に明らかにすることを目的とする。本年度は昨年度から継続中のモーションイベントの中に存在する「動きの軌跡」「動きの様態」のどちらの意味要素に乳幼児が注目し、動詞語意のカテゴリーを形成するかを調べる実験を完了した。日本人乳幼児は、当初(生後18ヶ月)動詞は動きの軌跡を表すと解釈するが、この傾向は発達と共に減り、最終的に様態への対応づけのバイアスに変化していく。しかし、日本語では様態を表す動詞と方向・軌跡を表す動詞の分布があまり偏っていないことを反映し、英語母語児のような顕著な様態バイアスは5歳児や大人でも見られなかった。本年度はまた、動詞の文法的形態、項構造がイベントと動詞語意の対応づけにどのように影響を与えるかを調べる実験にも着手した。2歳半で「が」や「を」の格情報を使って新奇な自動詞、他動詞を対応するイベントにマッピングできること、3歳、5歳になると格情報以外の情報(語順、レキシコン中の統計分布)などを手がかりに使うようになるという知見が得られた。
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