コンピュータープログラミング学習の複雑な認知過程の実態を解明し、それに基づいた効果的な教育環境をデザインすることを目的として、以下のように研究を進めた。 本研究では一つの重要なステップとして、実際のプログラミングの授業の中で起こる学習者の誤解や混乱の事例をビデオによって収拾記録、整理しプログラミング学習の認知過程を解明するための基盤を作ることがある。このことに関しては、実際にプログラミング入門のクラスの演習場面を中心に一年間にわたって学習の事例を広範にビデオ記録として収拾した。また、多量のビデオ記録を閲覧しやすくし、必要な部分を容易に取り出し分析可能にするためのシステムを設計、開発し、それを稼動させた。このシステムはデジタルビデオの元データをMPEG1形式に圧縮変換し、端末上からビデオデータの必要部分を容易に取り出してディスプレイ上で閲覧可能にし、また必要なコメントを付加することでよりよい整理と構造化を可能にするものである。このシステムを実際に使用して、ビデオデータを閲覧し、コメントを付加することで、膨大なデータから研究に必要な部分を容易に取り出すための整理と構造化を始めた。 上記の方法で収集、蓄積整理したプログラミング学習のビデオデータの収拾整理と平行して、それらのデータに基づいて、プログラミングの学習の認知過程の詳細な分析を開始した。特にプログラミング学習の過程で誤解や混乱に陥る躓きの典型的な事例を詳しく分析し、認知過程を解明するための理論的な枠組みの構築を進めた。理論的な枠組みの構築の一環として、認知過程を具体的かつ詳細に表現する枠組みとしてコンピューター上のシミュレーションモデルの開発を進めた。これまでのプログラミング学習の認知過程の分析解明の成果として、部分的な表面的な知識で課題を解決してしまい、十分な理解がないままに学習が進行してしまう事例が多いということなど、理解と学習との関係を中心に、プログラミング学習の実態の詳細な認知過程が解明されつつある。
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