研究課題
基盤研究(B)
複数の餌場所をつなぐ機能的ネットワークのデザイン:寒天ゲルの上をシート状に広がる粘菌の上に複数の餌小片を特定の配置で与えると、粘菌は体の形を管構造からなるネットワーク状に変えて、散在する餌場所を全て結んだ。このネットワークの形をグラフ化して(餌場所を頂点、管を辺として)、ネットワークの機能性を評価した。三つの餌場所を正三角形の頂点に置いた時、最短経路(スタイナーの最小木)やサイクル経路もしくは両者の共存経路がしばしば(三種あわせて7割程度)現れたが、その他にも様々なネットワークの形が見られた。管の全長は短いものから長いものまで広く分布したが、管のランダムな断線による接続補償性(サブグラフに分解しない確率)はそれぞれの全長のもとで常にほぼ最大となっていた。餌場所を増やしていくと、ネットワークは複雑化したがやはり少数の管で全ての餌場所を結んだ。全長の最短性と断線補償性に加えて、各餌場所間の接続距離を定義して評価すると、これら三つの指標はどれも適度に満たされていた。時として相反する三つの指標をうまく妥協してどの指標も悪い性質を持たないネットワークをつくっていることがわかった。ネットワーク形成の数理モデル化の基礎として、粘菌の粘弾性的挙動と結合振動子系としての性質の両方をとりいれた偏微分方程式モデルをつくった。これにより、粘菌の基本的な収縮運動パターンと往復原形質流動パターンを再現できた。管構造の形成機構は、遅い時間スケールでおこる現象なので将来的には現段階のモデルが表す速い時間スケールのダイナミクスとうまく分離して取り入れられると期待できる。
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