研究課題
本プロジェクトは、原始生命体である粘菌の特徴を活かして、外界情報を受容し、判断し、適切に応答するというインテリジェントな生命システムの動的な機能発現機構の解明をめざす。今年度は主に以下に示すように、粘菌の迷路問題解法に関する数理モデルを構築すると共に、原形質のリズム性に関する新しい知見を得た。(1)粘菌管ネットワーク形成の数理モデルの構築とカーナビ問題への応用:粘菌を迷路の中に閉じ込めておき、その中に2つの場所に餌を置くと、粘菌は餌場に集合しながら、2つの餌場を最短経路でつなぐ太い管をつくる。この迷路問題解法のメカニズムは、原形質の輸送経路である管が、流量が多い時はますます太くなり、逆に流量が少ないと細くなるという適応性にあると考えられる。さらに流動は一定のリズムで方向を変える。これらの適応的ダイナミクスを取り込み、ネットワークパターンの時間発展方程式を構築し、ネットワークの発展・消滅を成功裏にシミュレートした。さらに、この数理モデルは、複雑な道路地図上でのカーナビゲーション問題に適用できることを示した。(2)等比数列をなす多重周期性の発見:粘菌は、時々刻々とその形状を変える。細胞形状の時間変動を長時間(30時間)にわたり定量的に計測し、スペクトル解析を行った。20秒から10時間の時間スケール内で、粘菌変形体は少なくとも7個の多重周期性を示し、かつ周期は等比数列を構成することを見出した。パワースペクトルは、周波数の逆数に比例して減少し、1/fゆらぎを示した。
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