研究概要 |
本研究は,プロテオーム解析技術の登場に対応して,そのゲノムワイドな解析データからの知識見に関して情報科学的基礎付けをしたものであり,研究成果は大きく2つに分けられる. 1.タンパク質ネットワークの推定に関する研究 マイクロアレイデータとタンパク質相互作用データを用いて遺伝子ネットワークの推定を行う方式を開発した.これは,Y2HやMSによって得られたタンパク質相互作用データをベイジアンネットワークのプライアとして用いることにより,マイクロアレイ遺伝子発現データからノンパラメトリック回帰を用いたベイジアンネットワーク推定技法を開発した.また,主成分解析の方法を応用しマイクロアレイデータから,タンパク質コンプレックスを推定する方法を同時に開発した.また,ベイジアンネットワークとマルコフネットワークを組み合わせたモデルを構築することにより,タンパク質ネットワークの推定においてマイクロアレイ遺伝子発現データを利用し,より精度の高い推定を可能にする方式を開発した. 2.パスウェイのモデル化とシミュレーションの方式についての研究 これまで開発してきたソフトウェアに対して新たにHybrid Functional Petri Net with extensionという基本アーキテクチャを開発し,それによってタンパク質の細胞内局在情報やタンパク質の修飾などの情報をモデル化にとりこむことができるようにした.これを用いて文献及びそれに付随しているデータから様々なタンパク質ネットワークを含んだ形で生体内パスウェイのモデリングを行いその解釈及び評価により,この方式が有効であることを実証した.具体的には,アポトーシスパスウェイ,分裂酵母の細胞周期に関するネットワーク,P53に関するネットワークなどを対象とした.
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