研究課題/領域番号 |
15300101
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
生体生命情報学
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研究機関 | お茶の水女子大学 (2005) 長浜バイオ大学 (2003-2004) |
研究代表者 |
郷 通子 お茶の水女子大学, 学長 (70037290)
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研究分担者 |
高橋 健一 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 助教授 (20322737)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2005
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キーワード | フォールディング / モジュール / 分子動力学計算 / プロテインG / バルナーゼ / 階層的構造形成 / 疎水性コア / 二次構造 |
研究概要 |
タンパク質は膨大な構造的自由度を持つにも関わらず、ほんの生理的時間の範囲で特異的な天然構造へ折れたたまれる。そのしくみを明らかとする目的で、バルナーゼおよびプロテインGの熱変性シミュレーションを実行した。 バルナーゼについて、498Kの分子動力学計算を独立に10回実行し、共通に見られるアンフォールディング過程の特徴を抽出した。天然構造に存在する疎水性コアや二次構造は、時間とともに徐々に崩れていき、最後には、非常に限られた局所構造が天然様に保持される以外はほとんど消失した。これは既知の実験結果と整合する結果である。一方、このように大きくほどけた状態においても、天然構造で見られる階層的構造が保たれていることが、我々の解析で初めて明らかとなった。すなわち、元々天然構造で見られる、コンパクトな部分構造(モジュール)からなる階層的な構造が、アンフォールディングにより構造全体は大きく膨らむにもかかわらず、元々の部分構造の存在が同定できる程度に階層性を保持する傾向が見られた。さらに、モジュールの両端付近にある疎水性残基どうしの相互作用が高い割合で保持されており、これがモジュール構造を保つ主要因と考えられた。 プロテインGについては当初、既知の実験結果と整合しない問題があったが、条件検討の結果、温度と静電相互作用との関係に起因する可能性が見いだされ、安定性の低い変異体の使用や電荷を弱めたシミュレーションにより、実験との整合性のよい結果が得られるようになった。結果の詳細を解析したところ、バルナーゼの場合と同様に、アンフォールディングが進むにつれ疎水性コアや二次構造が大きく壊れて行く一方で、天然様の階層的構造は比較的よく保持されることがわかった。 以上の結果から、タンパク質のフォールディング過程の初期にモジュール構造が形成され、それが構造探索空間を大幅に狭める役割を果たしているとの描像が得られた。
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