研究課題
1.昨年度の研究で視覚野抑制性細胞の興奮性シナプスにNMDA受容体依存性の可塑性的変化が起ることを見出したので、発達期のラット視覚野スライス標本を用いてその解析をさらに進めた。2.顕微鏡下で2・3層非錐体細胞の細胞体からホールセル記録を行い、パッチ電極からニューロビオチンを記録細胞に導入し、記録実験後に形態学的検索を行い、記録細胞が抑制性細胞であるか判定した。抑制性シナプス伝達を薬理学的にブロックし、4層の電気刺激により誘発される単シナプス性興奮性シナプス後電流を記録した。3.錐体細胞における長期増強の誘発には、記録電極から通電してシナプス後細胞を脱分極(0mV)した状態で、シナプス前線維に低頻度(1Hz)の刺激を与えるペアリング刺激を100秒間続けるだけで十分であるが、抑制性細胞では、もっと長い(15分間)ペアリング刺激がより有効であることが分かったので、その刺激を用いて可塑的変化を誘発した。4.生後9-19日では長期抑圧が約半数の細胞で起り、約1/3の細胞で長期増強が起った。生後20-29日では長期抑圧は約半数の細胞で起きたが、長期増強の発生頻度は低下し、約1/6の細胞で起きるだけであった。したがって、長期増強の発生頻度は錐体細胞と同様に発達に伴い低下する。5.脱分極通電で発火させると、発火頻度にadaptationが生じないfast spiking細胞では、長期抑圧だけが起きた。発火閾値の低いadapting細胞では主に長期抑圧が生じ、一部の細胞に長期増強が見られた。高閾値のadapting細胞では長期抑圧は起らず長期増強のみが起った。この結果は、抑制性細胞のサブタイプによりNMDA受容体依存性の長期増強と長期抑圧の起りやすさが著しく異なることを示している。
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European Journal of Neuroscience 21
ページ: 422-430
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ページ: 1077-1087