研究概要 |
これまでの網羅的な遺伝子探索(サブトラクション法、DNAアレイ法)によって得た大脳皮質層特異的に発現する細胞表面分子や細胞外分子(Zhong et al.,2004,in press)の視床軸索に対する役割を解析するために、皮質内の空間的分布と同スケールで分子を塗布する新たなin vitro解析法の開発を行った。そのために、リソグラフの鋳型を軸索成長のためのメンブレン上に積層し、その上からタンパク質溶液を押し出すことで、タンパク質を帯状にプリントする手法を手掛けた。その幅は生体内の軸索束の幅に則して100-50μmとした。実際に、プリントされたタンパク質が機能することをテストするためには、コラーゲン及びラミニンを用いて、後根神経節細胞又は大脳皮質組織片を培養し神経突起の伸長を観察した。また、メンブレンの材質としては、ニトロセルロース、親水化ポリ四フッ化ビニリデン(PVDF)、非親水化PVDF、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリLリジン(PLL)をコートしたPTFE、ポリカーボネイト(PC)などを用いた。その結果、いずれのメンブレンにおいてもコラーゲンは限局してプリントされたが、突起伸展の選択性は材質によって異なり、特に親水化PVDF及びPTFEで高い選択性を示した。ラミニンをプリントした場合には、突起伸展の選択性はいずれもコラーゲン塗布に比べて同等か低かったが、ラミニン溶液中に増粘剤として10%ポリエチレングリコール(PEG)を加えプリントした場合、プリントの限局度、突起伸展の選択性が向上した。以上の結果から、培養メンブレンの材質やタンパク質に添加する増粘剤を選ぶことでタンパク質を空間的に限定した領域にプリントすることが可能であり、そのメンブレン上で末梢神経系や中枢神経系の軸索成長をシミュレーションする展望が見出された。
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