研究課題/領域番号 |
15300108
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
粂 和彦 熊本大学, 発生医学研究センター, 助教授 (30251218)
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研究分担者 |
粂 昭苑 熊本大学, 発生医学研究センター, 教授 (70347011)
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キーワード | ショウジョウバエ / 時間生物学 / 睡眠 / 不眠 / ドーパミン / 寿命 / 生物時計 / 概日周期 |
研究概要 |
引き続き、神経回路が単純で、概日周期の多くの変異が使用可能なショウジョウバエを用いて、概日周期と睡眠の解析を行った。昨年度までの研究で、睡眠をほとんど取らない常染色体劣性の変異株(不眠:fmn変異株)が、第2染色体上のコカイン感受性のドーパミン・トランスポーター遺伝子(dDAT)の変異であることが示されたので、この変異株のさらに詳細な解析を行った。まず、変異株を、2種類の野生株との間で、6-7世代にわたりバッククロスを行い、遺伝的な均一化を行った。その結果、もともと活動度の低い野生株と背景をそろえたものでは、同じfmn変異を持っていても、より睡眠をたくさん取ることが示された。この系統を用いることで、従来、不可能だった、fmn変異の、覚醒域値、覚醒時間、および、睡眠剥奪に対する影響を調べることが可能となった。その結果、fmn変異は、睡眠時の覚醒域値を下げた。また、強制的に覚醒された場合には、反応性の覚醒時間は延長し、また睡眠剥奪による過睡眠現象に対しては、抑制的な効果があることも示された。これらの結果は、ショウジョウバエにおいて、ドーパミンが、覚醒レベルの制御にも強く関与することを示した。さらに、哺乳類では、ドーパミン制御系の作用を、カフェインが増強することが知られているが、ショウジョウバエの、fmn変異においても、野生型よりも強く、カフェインの効果が認められため、この点でも、哺乳類との類似性が示された。 また、fmn変異に加えて、新たに睡眠・覚醒制御に関与する遺伝子を探索するため、神経系に特定の遺伝子を過剰発現させることにより、行動に変化をもたらす遺伝子の探索を行った。その結果、ある転写因子の過剰発現が、睡眠・覚醒のリズムパターンを変化させることがわかり、現在、その効果をさらに探求中である。
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