研究課題
本研究では、神経幹細胞の培養と脊髄損傷ラットへの移植による効果を調べた。しかし一方で、骨髄間質細胞の移植による脊髄損傷の治療効果がはっきりして来たために、自家移植が可能であり、かつ増殖の制御が可能である点で、臨床応用に有利な細胞として骨髄間質細胞の移植を優先した。1.まず、神経幹細胞が少なくとも死後2日のラットから培養できることを示し、移植に用いた。2.胎児からも神経幹細胞を培養して移植に用いた。3.いずれの神経幹細胞も損傷脊髄に移植することで、良く生着し、宿主組織に組込まれた。4.また、脊髄表面に付着した神経幹細胞は時間の経過とともに増殖して、脊髄表面全体を覆うようになった。5.神経幹細胞は、同種移植によらざるを得ず、かつ増殖が制御できない状態では移植細胞として問題があることが分かった。6.一方、骨髄間質細胞は移植後の安全性から、臨床応用に適する細胞であることが分かった。7.細胞の移植は最初は損傷部に直接入れる方法をとったが、その後髄液内に注入する方法によるようになった。後に述べるようにこの方法は急性期の治療に適していると考えられる。8.髄液経由あるいは損傷部直接いずれの方法によっても、骨髄間質細胞は移植後3 4週に宿主脊髄から消失することが分かった。それでも損傷脊髄は空洞の体積が小さくなり、宿主の行動的な恢復が見られた。9.上の所見から、骨髄間質細胞は細胞自体が宿主組織に組込まれて効果を発揮するのではなく、細胞から分泌される栄養因子と考えられる機能分子が放出されて細胞死を制御するのもと考えられる。10.また、骨髄細胞を分画して、培養というステップを経ないで単核球を移植する方法を検討中である。11.骨髄の再生には急性期と慢性期を分けて考える必要がある。急性期には変性すべき細胞の救済という点が主な目的であり、慢性期では欠損した組織の補充が主である。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (4件)
Tissue Engineering 10
ページ: 493-504
Invest.Ophthalmol.Vis.Sci 45
ページ: 1020-1025
Exp.Neurol. 187
ページ: 266-278
J Clin Invest 113
ページ: 1701-1710