研究概要 |
本研究計画の目的は,一次感覚ニューロンにおけるMAPKなどシグナル伝達因子の疼痛伝達時の動態とその機能的意義を解明する事である.昨年度は、リン酸化ERKに焦点を絞って複数の論文を報告したが、今年度はもう一つの代表的MAPKであるp38に着目した。さらに、p38リン酸化を用いてTRPファミリー分子の一次感覚ニューロンにおけるin vivo機能解析を遂行するが重要な本研究の目的である。 (1)今年度の研究により,最近報告され、冷刺激に関係する可能性で注目を集めているTRPA1が、炎症状態やニューロパチックペインの病態において、その発現を一次感覚ニューロンにおいて増加させ、その発現調節にp38が関与していることを見いだした。さらにTRPA1のアンチセンスオリゴの投与により、その発現をノックダウンすると、病態における冷刺激による痛覚過敏反応が抑制された。また、このp38のシグナル伝達系の亢進には、その上流にNGFの関与があることを見いだした。これらの結果は、まとめて、Journal of Clinical Investigationに発表され、注目を集めている。 (2)TRPA1,TRPM8及びTRPV1の一次知覚ニューロンにおける詳細は分布を形態学的手法を用いて報告した。この結果は、Journal of Comparative Neurologyに発表した。 (3)脊髄や延髄レベルのシグナル伝達系の動態を調べてために、CaMKIIに着目して、ニューロパチックペインモデルにおける動態と痛覚過敏における役割を解析した。脊髄における結果はEuropean Journal of Neuroscienceに、延髄における結果はExperimental Neurologyに発表した。
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