1.神経細胞誕生のとき側方抑制によって神経細胞の数を制御する役割をもつノッチーデルタ経路を阻害する変異体や、ノッチ1aに対するモルフォリーノを注入した胚を調べた。そのうちのひとつでは、同定可能な神経細胞であるマウスナー細胞が最大30倍(野生型では左右2個のものが、約60個)まで増えることを示した。これは、予想以上に多数であった。細胞体が異所的な分布をするものもあったが、後脳の第4節に左右側方に誕生してくるという性質は不変であった。特異的抗体をもちいて調べた軸索ガイダンスも一見異常であるが、もっとも基本的なパタン(まずフロアープレートを越えてから、尾方へ曲がる)および、マーカー分子の発現には変化がなく、個々の神経細胞のアイデンティティは保たれていることが示された。したがって、この突然変異体は、特異的神経細胞分化や基本的回路形成を制御する遺伝子を系統的に解析するための材料として、非常に優れていることが示された。 2.ゼブラフィッシュの脳の中で最大のマウスナー神経細胞の発生と機能を分子生物学的、ないし遺伝学的に解析するため、マウスナー神経細胞でGFPを発現する可能性のあるいくつかのトランスジェニックについて詳細に調べた。その結果、いくつかのラインで特徴的な発現していることを特異抗体との二重染色などによって証明した。また、バックフィル等の技術によって、マウスナー神経細胞を生体において蛍光ラベルしたあと細胞体を集め、cDNAライブラリーの作成とその解析を開始している。
|