(1)αシヌクレイノパチー患者脳におけるリン酸化αシヌクレインの蓄積とCK2についての解析。 ラット脳からαシヌクレインをリン酸化する酵素を部分精製し、性質を調べたところ、その主要酵素はカゼインキナーゼ2(CK2)であることが判明した。そこで患者脳におけるCK2の変化について検討した。凍結剖検脳組織を様々な界面活性剤で順次可溶化、段階的に抽出して、CK2を特異的に認識する抗体、及びリン酸化αシヌクレインを認識する抗体を用いてウエスタン解析を行ったところ、患者脳と正常脳においてその反応様式に違いが認められた。患者脳においてもCK2がαシヌクレインのリン酸化に影響を及ぼしている可能性が考えられた。 (2)αシヌクレインのリン酸化機構とその制御に関する検討。 αシヌクレインのリン酸化機構を調べるため、可溶性のαシヌクレインと線維化したαシヌクレインのリン酸化、及びそのユビキチン化について解析した。線維化したものは可溶性のものよりもリン酸化程度は低かったが線維構造をとっていてもリン酸化されうることが観察された。また、in vitro、及び培養細胞を用いた実験においては、リン酸化はユビキチン化には影響しなかった。αシヌクレインの異常リン酸化の機序を探るため、現在、神経系の培養細胞にαシヌクレインを過剰発現し、さらに刺激を加えることにより患者脳内でおこっているリン酸化状態に類似の変化おこす条件検討を行っている。
|