研究概要 |
(1)神経細胞内におけるαシヌクレインのリン酸化の解析。 試験管内においてαシヌクレインがカゼインキナーゼ1、2、あるいはGRK5によってリン酸化されることが示されているが神経細胞内おいて実際にはたらく酵素は未だ十分に明らかでない。そこで初代神経細胞を用いてαシヌクレインのリン酸化を解析する。ラット胎児脳大脳皮質から初代神経細胞を調製し、129番目のセリンのリン酸化を認識する抗体、及び候補のリン酸化酵素に対する抗体を用いてイムノブロット、免疫組織染色により検出した。その結果、αシヌクレインは培養12日から15日頃から発現がみられ、28日目までほぼ同程度の発現を維持した。また、129番目のセリンのリン酸化を認識する抗体の反応も非リン酸化抗体のそれと同じように検出され、21日、25日目が最も高い傾向が見られた。このリン酸化はCK2の阻害剤であるDRP、及びアピゲニンによりほぼ阻害されたが、CK1の阻害剤であるCK1-7では阻害がかからなかった。またPP1,2Aの阻害剤であるオカダ酸処理を行うとリン酸化の上昇が見られた。以上のことから、ラット脳初代培養細胞内においてαシヌクレインは主にCK2によりリン酸化されていること、またPP1,2Aがその脱リン酸化に関わっていることが示唆された。 (2)αシヌクレインのリン酸化機構とその制御に関する検討。 αシヌクレインがタウと同様に微小管の重合を促進する機能があるとの報告がなされたことから、これが事実かどうか追試を行った。大腸菌に発現したリコンビナントαシヌクレイン、あるいはタウを精製チューブリンと混合し350nmの吸光度を測定したところ、タウを加えてときは濁度の著しい上昇が観察されたのに対し、αシヌクレインを添加したものではほとんど変化は見られなかった。この結果からαシヌクレインにはタウのような微小管重合促進能はないものと結論された。αシヌクレインをCK2でリン酸化した後に同様の検討を行ってみたが、非リン酸化αシヌクレインと同じ結果であった。またCK2によるαシヌクレインのリン酸化は、チューブリン存在、非存在下で著しい違いは認められなかった。
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