研究概要 |
我々が同定した神経特異的遺伝子BRINPファミリーは,全く新規のタンパク質であるBRINP1とこれに類似する2種類のタンパク質からなり,いずれも神経分化過程で誘導され(公表済),神経回路形成や脳高次機能における生理的役割が推定される.本研究ではノックアウトマウスや発現系の構築を通じてBRINPファミリーの生理機能と病態における役割を解明することを目的とする.本年度は,BRINPファミリー遺伝子の遺伝子欠損マウスの作成を継続すると共に,BRINPファミリータンパク質の機能解析に関して,以下の成果を得た. 1)各BRINP遺伝子欠損マウス作成用ターゲテイングベクターを構築した.欠損部位としては,各BRINPタンパク質コード領域中で最も大きな第8エクソンとした.さらに各BRINP遺伝子Exon8欠損ES細胞を樹立し,キメラマウスを得た.さらに,BRINP1遺伝子に関してはヘテロ欠損マウスを得たので,現在ホモ欠損マウスの作成を行っている.今後ホモマウスの解析を通じて,BRINP遺伝子の生理機能を解析する. 2)さらに神経選択的転写抑制因子(NRSF)とBRINP1の発現異常(それぞれ発現昂進および消失)によって生じる中枢神経系腫瘍細胞を見いだした.正常非神経細胞や神経系腫瘍細胞に発現させた各BRINPタンパク質は,細胞周期抑制能を示した(G1/S移行の抑制).さらに腫瘍系細胞においてはアポトーシスの促進が見られたBRINP変異体発現ベクターを用いた解析により,細胞周期抑制機能は各BRINPのC末側の部位に存在することが明らかになった(論文作成中). 3)Two-Hybrid法により同定されたBRINPと相互作用する複数のタンパク質について,相互作用に関与するBRINPタンパク上のドメインの決定を行った.その結果,BRINPのC末側の部位に結合部位が存在することが明らかになった(論文作成中).
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