脊髄小脳失調症6型(SCA6)はP型Caチャネル分子内のポリグルタミン伸長により引き起こされる。これまでに知られている多くのポリグルタミン疾患においては、個々の臨床病理学的特徴はそれぞれ異なるものの、細胞毒性を引き起こすメカニズムに関しては共通ではないかと考えられている。しかしながらSCA6におけるポリグルタミン伸長の程度は、他の疾患においては正常範囲内であることから、SCA6に関してはポリグルタミン疾患というよりはチャンネロパシー(P型Caチャネル機能の変化が原因)ではないかと考えられてきた。実際、我々を含め多くの研究グループのこれまでの研究結果はこの仮説を支持する。しかしながらこれらの実験は全て、SCA6変異を有するリコンビナントP型Caチャネルを非神経系の培養細胞に発現させて得られた結果であるため、神経系の細胞、特に本疾患において変性脱落するプルキンエ細胞におけるSCA6変異のチャネル機能への影響に関しては不明のままである。そこで我々はSCA6ノックインマウスを作成しこの課題に挑戦した。チャネル特性の検討は正常P型チャネルの影響を排除するためにSCA6ホモノックインマウスより調整したプルキンエ細胞を用いて行った。その結果、これまで非神経系細胞を用いた実験において指摘されていた様々なチャネル特性の変化はプルキンエ細胞においては検出されないことが明らかとなった。この結果はSCA6発症の原因がチャンネロパシーによるものではないことを示唆する。したがってSCA6発症の原因追求はポリグルタミン病としての観点から行うことが重要であると考えられた。そこで我々は海馬初代培養神経細胞を用いてSCA6変異がP型Caチャネルの神経細胞内における局在性に影響を与えるかどうかを検討したところ、影響を与えないことが明らかとなった。現在、初代培養プルキンエ細胞を用いて局在性の検討を続けている。
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