研究課題
基盤研究(B)
我々は脳で最も主要な神経栄養因子であるBDNF(brain-derived neurotrophic factor)が神経細胞における蛋白合成を促進することを見出している(JBC 276,42818-42825)。本研究ではBDNFが神経細胞の樹状突起のシナプス近傍で主にmTOR(mammalian target of rapamycin)シグナル経路を活性化することを見いだした。BDNF/TrkBシグナルはP13K-Akt-TSC2-RheB-mTOR/raptorと伝達され、その結果p70S6Kと4EBPのリン酸化が起こり、翻訳の開始(initiation)が活性化される(原著論文7)。同時にp70S6KはeEF2 kinaseを介してeEF2を活性化し、翻訳の伸展(elongation)の過程も賦活する。各種翻訳因子の細胞内分布を免疫組織化学及び免疫細胞化学法にて調べたところ、樹状突起にも細胞体と同様に各種翻訳因子が存在していた。さらにシナプトニューロゾーム画分や単離樹状突起、あるいは培養細胞へのBDNFの局所投与の実験を行い、BDNFによる翻訳の活性化が樹状突起でダイナミックに局所的に起こっていることも明らかにした。次に神経可塑性パラダイムにおける翻訳シグナルの変化を明らかにするため、ラット海馬スライスを用いた電気刺激による長期増強(LTP)とラットの空間学習の実験を行った。どちらにおいてもmTORシグナル系の活性化と蛋白合成の促進が観察され、さらにmTOR阻害剤であるラパマイシンによるLTP及び空間学習獲得の阻害が観察された。このことは神経細胞におけるmTORシグナル系を介した新規蛋白合成(翻訳活性化)が脳の可塑性に重要な役割を果たしていることを強く示唆している。
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