研究課題
1.カルシニューリンにより制御される虚血関連因子の総合的な解析カルシニューリン活性を介して遅発性神経細胞死を惹起する新たな因子を網羅的に解析するため、カルシニューリンの阻害剤であるCsA投与、非投与群の虚血ラットのCA1からmRNAを抽出し、ラット用DNAチップ(アジレント製、15,000種類以上)にて解析した。虚血後1、6、12、24,48時間後には全体で約3,000遺伝子の変化が認められた。さらにCsAの投与により、上昇または低下する遺伝子が約800遺伝子同定された。これらの中で、条件を絞ることによって、この1/10の遺伝子、約100個が有意に変化していることが想定されたため、現在RT-PCR等を用いて、その確認を行った。2.カルシニューリン活性により制御されるカルシウム受容体の機能解析海馬のスライスを用いたin vitroの実験系において、CsAおよびFK506の投与により、低酸素刺激による細胞内カルシウム上昇がきわめて効果的に抑制できることが判明した。この結果は、カルシニューリンが、カルシウム受容体(細胞膜、または細胞内)を制御していることを示している。現在、カルシニューリンの特異的阻害蛋白であるCabinを用いたアデノウイルスベクター、およびCsAの別のターゲットであるcyclophilin Dのdominant negative変異体を用いたアデノウイルスベクターを作製した。現在詳細な解析を行っている。3.Phospolipase Cδ1(PLCδ1)マウスを用いた前脳虚血におげるPLCδ1の役割解析)虚血初期および後期の細胞内カルシウム調節の重要な因子としてPhospholipase Cがあり、神経細胞では特にそのサブタイプであるPLCd1がin vitroの実験系において細胞死に直接関与していることが判明している。ただ、今年になって、作製されたPLCd1マウスに関しては、日本の他のグループから、虚血による変化がないとの報告があり、この系の評価をやめ、来年度はNCX2のKOマウスを用いて解析を進める予定である。
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