研究課題
シナプトタグミン(Syt I)は一般的にシナプス伝達の際のカルシウム・センサーであると考えられている。我々はシナプトタグミンIの機能をさらに解明するためにショウジョウバエの突然変異体を用いてシナプス伝達の解析を行った。Syt Iにはカルシウム・センサーとしての作用以外に、神経終末に活動電位が到着してシナプス伝達がおこるとき以外の時間にシナプス小胞が放出されないようにする負の制御分子としての役割があると考えられている。この考えはSyt Iを過剰発現させると自発性シナプス小胞放出がおさえられること、またSyt I欠失変異体においては微小シナプス電位の頻度が高いことから提案されたものである。そこで我々はショウジョウバエ突然変異体を用いてこの考えを立証しようと試み、次のような知見を得た。i)Syt Iの完全欠失株の幼生においては微小シナプス電流の頻度は対照に比して増加はしていなかった。しかし、この欠失株においてはシナプス小胞の数が著しく減少していることから、残存するシナプス小胞の放出頻度は増大していると考えられる。ii)アミノ酸一つが置換をおこした突然変異体(AD3)では、神経刺激におっておこるシナプス伝達は中程度に抑制されているが、微小シナプス電流の頻度はSyt I完全欠失株よりも、さらに低下していた。このことはAD3-Syt Iは積極的に自発性シナプス小胞放出をおさえていると考えられる。iii)Syt IのC2Bドメインのアスパルテートをアルギニンに置換した変異体(B-D1,2N)では、高K^+液中での小胞放出頻度がカルシウム依存的に抑制された。以上のことから我々はSyt Iには自発性小胞放出をカルシウム依存的に抑制する機能があることを示すことができたと考える。
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