内因性カンナビノイド(マリファナ類似物質)がシナプス後ニューロンの活動状態(脱分極やある種の受容体活性化)をシナプス前終末に知らせる逆行性シグナルとして働いていることが最近明かとなった。本研究では、ラット培養海馬ニューロンを用い、逆行性シグナルとして働く内因性カンナビノイドの同定および生成・放出メカニズムの解明をめざした。得られた結果は以下の通りである。 (1)内因性カンナビノイドの候補であるアナンダミド、2-AG、noladin etherの3物質についてシナプス伝達を抑制する効果を比較した。その結果、2-AGが最も効果が強いことが判明した。(第80回日本生理学会大会で発表) (2)2-AGの前駆物質であるジアシルグリセロール(DAG)は膜のリン脂質よりホスホリパーゼGCの働きにより生成される。そこでDAGの生成量を種々条件下で測定し、逆行性シグナル発生量と相関するかどうか調べた。DAC量は、培養海馬ニューロンに強制発現させたDAG感受性TRPC6チャネルの電流を測定することによりリアルタイムで検出した。逆行性シグナルを発生させる刺激(グループI代謝型グルタミン酸受容体およびM1/M3ムスカリン受容体の活性化)によりDAG量は著しく上昇し、また、逆行性シグナル発生量とDAG生成量はほぼ同じ細胞内Ca濃度依存性を示した。 以上の結果より、逆行性シグナルとして機能する内因性カンナビノイドは2-AGであり、その生成の律速酵素はホスホリパーゼCである可能性が高いと考えられた。
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