研究課題/領域番号 |
15300135
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉村 恵 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (10140641)
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研究分担者 |
古江 秀昌 九州大学, 大学院・医学研究院, 助手 (20304884)
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キーワード | 熱受容体 / カプサイシン / 膠様質 / TRPV1受容体 / EPSC / in vivoパッチクランプ記録 / 脊髄後角 / ノックアウトマウス |
研究概要 |
カプサイシン受容体のVR1は、発現系を用いた実験から侵害性熱受容体でありTRP受容体ファミリーの一つ(TRPV1)であることが明らかにされてきた。しかし、TRPV1の生体内における単一細胞レベルにおける生理的機能については明らかではない。そこで、TRPV1ノックアウトマウスを用い、末梢熱刺激によって誘起される熱応答の変化をin vivoパッチクランプ法を用いて解析した。まず、熱情報を伝えるC線維が主として終末する脊髄後角の膠様質細胞からパッチクランプ記録を行い、後肢にハロゲンランプを用いて熱刺激を加え、誘起されるシナプス応答の記録を試みた。正常ラットを用いた実験では、予想に反し記録した全ての細胞で熱応答は記録されなかった。脊髄後角の深層細胞のあるものは、その樹状突起を膠様質の伸ばしていることが形態学的に示されていることから、次にIII〜V層の細胞から記録をおこなった。約20%の深層細胞では熱刺激によって経過の速いEPSCの発生頻度と振幅が著明に増加した。しかし、緩徐な応答は見られなかった。それらの応答はCNQXでほぼ完全に抑制されたことから、グルタミン酸を介する応答と考えられた。次いで、膠様質細胞に入力するC線維がTRPV1受容体を発現しているか否かを明らかにするため、TRPV1作動薬であるカプサイシンの作用を検討した。ほぼ100%の細胞で、カプサイシンは前シナプス性に微小EPSCの頻度を増加させた。この実験結果は、膠様質細胞がTRPV1受容体を発現するC線維の入力を受けていることを示しており、膠様質細胞が熱刺激に全く応答を示さない結果とは矛盾する。これらの結果から、膠様質細胞はTRPV1受容体を発現しているC線維の入力を受けているが、そのTRPV1受容体は熱受容を行っていない可能性が考えられる。そのことはTRPV1受容体には異なるサブタイプが存在することを示唆する。その他の可能性として、C線維の中枢終末側にはTRPV1受容体が発現しているものの、末梢では受容体を欠失している可能性がある。
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