研究課題
基盤研究(B)
国内医学研究用のマカカ属サルにおいて、Bウイルス(Cercopithecine herpesvirus 1)抗体保有率が約40%に及ぶことがわれわれの調査で判明している。このことから、検疫の一環としての各施設における自家検査可能な簡便な抗体検出用キットの開発が求められている。国内ではBウイルスの大量培養による抗原作製は不可能であることから、Bウイルスと近縁のヒヒヘルペスウイルス(HVP2)抗原を使用した抗体検出系を開発するに至った。今年度、HVP2抗原を用いたBウイルス抗体検出用ELISAキットを試作し、希望する研究機関に頒布すると共に、キットの安定性の調査および操作性の向上を図るため、頒布先の機関よりキットを用いた検査結果と検査血清の送付を依頼した。なお、送付されてきた検査血清を研究代表者の機関において非乾燥抗原プレートを用いて再検査したところ、各研究機関での検査結果と異なる結果が少なからず認められた。そこで、今回、検査結果のばらつきの原因を探るため、長期保存が乾燥プレートの安定性に与える影響について検討したところ、プレート保存後14日、100日、200日の乾燥抗原プレートを用いた検査結果を比較すると、保存期間の長期化に伴って非感染細胞に対する値がやや高くなる傾向が認められた。しかし、検体の陽性・陰性の判定に影響を与えるほどのものではなかった。したがって、乾燥プレートを4℃で保存した場合、少なくとも200日間は安定であり、信頼性の高い検査が可能であるという結果が得られた。キット頒布先との検査結果の相違については、各研究機関でのキットの保存状態、検査手技、キット添付溶液の変性等の問題が考えられるが、今後さらに検討を重ね、より安定したELISAキットの提供を行う予定である。一方、ウイルスのゲノム解析も一部行い興味ある結果が得られており、さらに解析を続行する予定である。
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