研究課題
基盤研究(B)
全身性エリテマトーデス(SLE)では各種の自己抗体産生が見られ、自己抗体-自己抗原から成る免疫複合体の組織沈着が全身の炎症を惹起する。特に腎糸球体への沈着は、致死性のループス腎炎を誘発する。我々は、SLE自然発症系(NZB x NZW)F1マウスを用いて、ループ腎炎発症に係わる遺伝要因を解析し、NZBの第4染色体上のG-CSFレセプター遺伝子近傍ならびにNZWの第11染色体上のG-CSF遺伝子近傍にループス腎炎感受性遺伝子がマップされることを見出した。遺伝子の塩基配列解析の結果、G-CSFレセプター遺伝子にNZBとNZWの間に多型は見られたが、機能的差異を見いだせなかった。一方、G-CSF遺伝子にはNZBとNZWの間に、3'UTR部位の多型が見られた。この多型部位を利用したPCR-SSCP法で、ループス腎炎感受性遺伝子の連鎖解析の再検討を行った結果、G-CSF遺伝子に一致して最も強い相関が認められ、G-CSF遺伝子自身がループス腎炎の一感受性遺伝子となっている可能性が示された。多型により、NZWでNZBに比較してG-CSFメッセージレベルおよびマクロファージによるG-CSF産生能がいずれも有意に高く、また、抹消血中の好中球数も有意に高かった。さらにNZWの好中球数はより活性化していると考えられた。G-CSFはin vitroの系で脾臓T細胞におけるIL-4の産生能を亢進させることを見いだし、G-CSFがTh2機能を優位にさせることで抗体産生を亢進させ、腎炎の増悪に働いている可能性が示唆された。以上より、G-CSF遺伝子多型に基づくNZWでの高G-CSF産生能が、好中球の増加と活性化を来たし、一方ではTh2型サイトカイン産生を高めて液性抗体応答の亢進と免疫複合体量の増加をもたらすことで、腎炎の増悪に関わっている可能性が強く示唆された。
すべて 2004 2003
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