研究概要 |
ヒトが文章を読み理解するときに行われる文法(統語)処理に関する脳内の神経活動を時空間的に明らかにすることを目的として研究を進め、以下の結果を得た. 1.昨年と同様に,日本語複文中の文節「BがCを---する」中の目的語を転位させて「CをBがt----する」としたかき混ぜ文の脳内統語処理に着目した.文章問題の後に出す質問の呈示方法について検討し,正規文と同じ「BがCを---した?」の語順で句ごとに呈示(500ms間)することとした.その結果,かき混ぜ文で目的語があるべき位置(t)の名詞句において,対応する正規文の名詞句よりMEG反応が増大することを観測した.この反応は,被験者が文章を読むと並行してリアルタイム統語処理を行っていることを示す結果と考えられる. 2.脳磁図データから脳内の多領域に分散した活動を推定するL1ノルム法について,ノイズを考慮した広範囲なシミュレーションを行った.その結果,双極子モーメントの重心位置を計算することで,約5mm以内の精度で複数信号源(3双極子を仮定)が推定でき,分散したモーメントの標準偏差は約15mm以内であることが分かった.以上から,前頭,側頭,頭頂部などの領域に分かれた活動が弁別できると考えられる. 3.事象関連電位(ERP)実験では、名詞句や付加詞などの左右方向への転位によるERP成分を計測した.構文の種類にかかわらず,転位要素の構造への統合では左前頭部で陽性成分が観察されたことより、言語処理における構造への統合は、左前頭部が深く関与していることが示唆された。 4.日本語と同じS-O-V型の構文をもつ韓国語を使い,文末の動詞句の活用を変化(能動-受動置換)して文法的な非文としたときのMEG反応を計測した.その結果,約400msにおいて文法処理を反映すると思われる活動が左前頭下部に観測された.
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