研究概要 |
本研究は,遺伝子デリバリーシステムの細胞内動態と核内転写過程を独自の戦略に基づいて最適化し,ウイルスベクターを越える高い発現効率を有する人工遺伝子ベクターを開発しがん治療へ貢献することを目的とする.本研究は,(1)遺伝子及びそのベクターの細胞内動態の素過程を定量的に評価するシステムを構築する.さらに,量子ドットを用いて蛍光強度の減衰を防止するとともに,3次元解析により細胞内局在を定量的に評価する.(2)この定量系をスクリーニングシステムに活用し,各ステップを促進する素子の分子スクリーニングを行う.(3)アデノウイルスベクターと我々が構築した人工遺伝子ベクターとをin vivo及びin vitroで比較評価し,ウイルスベクターと比較して弱点となる過程を選択的に促進する素子を探索する.(4)以上のスクリーニングと最適化に基づいて構築された人工遺伝子デリバリーシステムのin vivoにおける標的組織到達性と遺伝子発現効率を定量的に評価する,という四つのステップからなり,ウイルスベクターを越える人工遺伝子ベクターを開発する. 平成15年度は,細胞内動態の素過程の定量的評価系の開発を行った. 遺伝子及びそのベクターの細胞内動態の素過程,すなわち,エンドソーム・ライソゾーム経路からの脱出,細胞質内の分解の回避,核内送達,核内転写の各ステップに分解し,各過程を定量的に評価するシステムを構築した.遺伝子の細胞内動態の解析を3次元解析へ拡張するために,核,エンドソーム・ライソゾーム系遺伝子をそれぞれ染色することにより遺伝子の細胞内局在を3次元的に解析するシステムの開発を行った.このスシスムにより,核内,エンドソーム・ライソゾーム系,細胞質に局在する遺伝子の蛍光強度を識別して定量することが可能となった.
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