HVJ-EとsiRNAを用いた多段階的抗癌機能増強法の開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15300163
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 金田 安史 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (10177537)
• キーワード: HVJ-E / ブレオマイシン / siRNA / ドラッグデリバリーシステム / 癌

研究概要

HVJ-Eへの抗癌剤ブレオマイシン(BLM)の封入条件を調べたところ0.3%のTriton X100を加えて10000xg,5min遠心する方法が最も効率がよかったが、加えた量の0.1%程度の封入であった。この封入HVJ-Eを用いて抗癌効果の増強が可能かどうかを種々の培養癌細胞を用いて調べた。細胞の生存をWST assayと細胞数の測定により判定したところ、HVJ-Eを用いないとほとんど抗癌効果はみられなかったが、HVJ-Eを用いると24時間以内にほぼ全滅した。このときに封入されているBLMの濃度は5ug/mlで、HVJ-Eを用いないとその300倍以上を加えないと同様の殺細胞効果は得られなかった。このときの細胞周期をFACSで調べるとG2期アレストがおこっており、その後アポトーシスが誘発された。これはHVJ-Eにより細胞内にBLMが効率よく導入されたためにおこったことを示している。さらにこの抗癌作用を増強するためにBLMの作用に関わるいくつかの分子をsiRNAでノックアウトしBLMの効果を調べた。まずBLMを分解するbleomycin hydroxylase(BLMH)を標的としてそれのsiRNAを設計し、HVJ-Eを用いてHeLa細胞に導入したところ5日間は完全にBLMHの発現を抑制した。しかしこの細胞にBLMを導入しても抗癌効果の増強はみられなかった。次にDNA修復に関わる分子の1つとしてpoly-ADP ribosyl polymerase(PARP)をsiRNAで同様に抑制したが増強効果はなかった。これらの遺伝子はBLMを投与しても発現に変化が見られなかった。そこでBLM処理で発現の変化する分子としてRad51を同定し、このsiRNAを作成し、これによるBLMの抗癌作用の増強を調べているところである。

研究成果

• [文献書誌] Shimamura, M.: "HVJ-envelope vector for gene transfer into central nervous system"Biochem.Biophys.Res.Comm.. 300. 464-471 (2003)
• [文献書誌] Yamamoto, S.: "A novel combination of suicide gene therapy and histone deacetylase inhibitor for treatment of malignant melanoma"Cancer Gene Therapy. 10. 179-186 (2003)
• [文献書誌] Oshima, K.: "Intrathecal injection of HVJ-E containing HGF gene to cerebrospinal fluid can prevent and ameliorate hearing impairment in rats"The FASEB J.. (in press).
• [文献書誌] Ogushi, I.: "Nuclear factor kappa B decoy oligodeoxynucleotides prevent endotoxin-induced fatal liver failure in a murine model"Hepatology. 38. 335-344 (2003)
• [文献書誌] Nakabayashi, M.: "HGF/NK4 inhibited VEGF-induced angiogenesis in in vitro cultred endothelial cells and in vivo rabbit model"Diabetologia. 46. 115-123 (2003)
• [文献書誌] Koike, H.: "Enhanced angiogenesis and improvement of neuropathy by cotransfection of human hepatocyte growth factor and prostacyclin synthase gene"The FASEB J.. 17. 779-781 (2003)
• [文献書誌] Kaneda, Y.: "Methods in ENZYMOLOGY"ELSEVIER. 596 (2003)