研究概要 |
1.デバイスの改良 NADPH oxidaseの制御サブユニットを改変することにより酵素本体であるcyt.b_<558>を永続的に活性化することに成功した。この結果,NADPH oxidaseは著しく安定になり,また活性化方法は従来に比べて極めて簡便になった。さらに濃い濃度で酵素サブユニットを混ぜて活性化することにより、凍結保存を可能にした。これにより、活性化酵素を使用可能な状態で輸送・保存することが可能になった。 2.酸化ストレス実験への応用 アミロイド形成の実験系としてしばしば用いられるヒト由来の培養細胞HEK293細胞を用いてex vivoでO_2^-の影響を調べた。培養液にデバイスを加えて30時間培養した。デバイスを5,000倍希釈で用いた時には細胞の増殖がとまり、500倍希釈では細胞死が起こった。O_2^-をH_2O_2へ変換する酵素SODを共存させた時にはこれらの現象が見られなかったことから,この現象はO_2^-の直接の作用によると思われた。また、ハムスター由来のCHO細胞もデバイスの添加で、増殖の阻害が見られた。ニューロン細胞(ラット由来)では同程度のデバイスを加えてもこのような現象は見られなかったが,さらに高濃度のデバイスを加えると細胞死が起こった。一方、アストログリア細胞では高濃度のデバイスを加えても細胞死は起こらなかった。またヒト癌細胞であるHela細胞は濃度にかかわらずデバイスの効果は見られなかった。これらのことから細胞により酸化ストレスへの抵抗性にかなり差があること、また癌細胞の一種が酸化ストレスにつよいことが示された。 3.デバイスのさらなる改良 細胞への添加量が予想以上に必要なことを鑑み、培地中(MEM Eagleほか)でのデバイスの安定性を調べた。その結果、安定性は培地中でかなり落ちることが見い出された。そこで、この問題を解決するため、活性化酵素を架橋により安定化することを試み、成功した。そこでこの方法をデバイスに応用し、実験に用いてみた。その結果,、培地中でも安定性のおちない改良型デバイスが完成した。このデバイスは今後の実験に大いに役立つものと期待される。
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