研究概要 |
1.酸化ストレス実験への応用 ヒト由来の培養細胞HEK293細胞を用いてO_2^-の影響を調べた。培養液にデバイスを加えて30時間培養した。デバイスを5,000倍希釈で用いた時には細胞の増殖がとまり、500倍希釈では細胞死が起こった。また、ハムスター由来のCHO細胞はデバイスの添加で、増殖の阻害が見られたが、細胞死は見られなかった。一方、ヒト癌細胞Hela細胞は濃度にかかわらずデバイスの効果が見られなかった。これらのことから、細胞により酸化ストレスへの抵抗性にかなり差があること、また癌細胞の一種が酸化ストレスにつよいことが示された。実際に効いている活性酸素種を知るために、HEK細胞についてcatalase、SODなどの活性酸素消去剤を用いて検討した結果、直接作用している活性酸素種はH_2O_2であることが明らかになった. 3.デバイスIIの開発 先に開発したデバイスは非常に活性が高く,安定性もよく使い勝手もよかったが,ただひとつの欠点は培地中での安定性が低いことであった。そこで、この問題を解決するために、デバイスをタンパク質架橋剤で固定化することを試みた.デバイスに架橋剤EDCと反応促進剤sulfo-NHSを同時に加え,穏やかな条件下で反応させた.その結果、安定性は著しく向上し、培地(MEM)中37℃で、半減期は3.3時間となり、また5時間後もなお40%以上の活性を有する酵素を得ることに成功した.そこでこの方法で作成したデバイスを"デバイスII"と命名した. 4.再び酸化ストレス実験への応用 このデバイスIIを今回はヒト前骨髄球由来のHL60細胞に加えてO_<2->を発生させ、その影響を調べた。培養液に新デバイスを加えて培養したところ、コントロールに比べて明らかに細胞死が促進され,22時間後生きた細胞数は30%程度まで減少した.デバイスIIだけでNADPHを加えない場合にはこのような現象は見られなかった.O_<2->をH_2O_2へ変換する酵素SODを共存させた時には効果はあまり変わらなかったが,H_2O_2を水へと変換させる酵素catalaseを共存させた場合には細胞死は殆ど抑えられた.したがって,この場合も実際に作用している活性酸素種は,主にH_2O_2であると思われた。
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