研究課題/領域番号 |
15300170
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
寺田 弘 東京理科大学, 薬学部, 教授 (00035544)
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研究分担者 |
牧野 公子 東京理科大学, 薬学部, 教授 (40147509)
小島 周二 東京理科大学, 薬学部, 教授 (90119579)
池北 雅彦 東京理科大学, 理工学部, 教授 (70138981)
杣 源一郎 徳島文理大学, 健康科学研究所, 教授 (00158990)
篠原 康雄 徳島大学, ゲノム機能研究センター, 教授 (60226157)
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キーワード | 結核 / 抗結核薬 / 結核治療 / 肺胞マクロファージ / 貪食 / 経肺投与 / 微粒子製剤 / PLGA微粒子製剤 |
研究概要 |
本年度は、抗結核薬リファンピシン(RFP)を含有したPLGA微粒子製剤(RFP-PLGA MS)の1)肺胞マクロファージ(Mφ)への取り込み様式、および2)ラット肺胞への経肺投与、ならびに3)MφがRFP-PLGA MSを食食する際にどの様なシグナルがMφから派生しているかを中心に研究を行った。その結果、次に示す成果を得ることができた。 1.RFP-PLGA MSは肺胞マクロファージに極めて効率的に貪食される。その貪食は、粒子径と粒子数に依存する。例えば、粒子径3μmの粒子をマクロファージ1個に対して微粒子製剤を10加えたときには(粒子数/Mφ=10)、70%以上のMφが貪食に関与していたが、それでも全然粒子を貪食しないMφが30%程度存在していた。粒子を貪食したMφのなかで、1個の粒子を貪食しているマクロファージ数が最も多く、次いで2個の粒子、そして3個の粒子の貪食というように貪食粒子数は変化した。しかし、粒子数/Mφの値を増大させても1個の粒子を貪食しているMφ数は殆ど変化しないのに反し、4個以上の粒子を貪食したMφ数が増大したことから、粒子の貪食によってMφの貪能は活性化されていることが示唆された。多くの粒子を肺胞マクロファージに送達するためにはRFP-PLGA MSは好適であるといえる。 2.MφのRFP-PLGA MSに対する貪食には、3-5μmの粒子径を有するものが良いことが明らかになった。しかし、系中のマクロファージの中で、貪食に関与したMφ数は3μm粒子を貪食したものが最も高い。従って、多くのMφにできるだけ多くの粒子を貪食させるためには、3μmのRFP-PLGA MSが良いことになる。 3.ラット肺胞へ3μmのRFP-PLGA MSを空気圧を用いて投与したところ、投与後6時間程度で、ほぼ100%のMφがRFP-PLGA MSを貪食していた。経肺投与によって結核菌に感染した肺胞Mφに対して、RFP-PLGA MSは効率よく貪食され、その結果、結核菌に対して殺菌効果を発現するものと期待できる。 4.大腸菌などの細菌をMφが貪食するとNOなどの活性酸素が放出され、近傍に存在する細胞に損傷を与える。しかし、RFP-PLGA MSを貪食しても、MφからNOは全く産生されなかった。 以上の結果から、RFP-PLGA MSはMφ内に存在している結核菌を殺滅するには好適な微粒子製剤であり、粒子の経肺投与によってこの目的を達成させることが可能であることが明らかになった。 本研究によって肺胞Mφの貪食性を活用することによって、"結核菌感染Mφをターゲットにした経肺結核治療"を実現させることができるものと期待している。
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