研究概要 |
生体分子シグナルに応答するバイオハイブリッドゲルの合成として,(a)生体分子架橋ゲルの合成,および(b)生体分子インプリントゲルの合成を試み,次のような結果を得た。 (a)生体分子架橋ゲルの合成 DNAを化学修飾することによってアクリロイル基を導入した後,二重鎖DNAを形成させた状態でアクリルアミドと架橋剤と共に重合することによって二重鎖DNAを架橋点として有するバイオハイブリッドゲルの合成に成功した。このような二重鎖DNA架橋ゲルは,標的DNA溶液中で架橋密度が減少することによって膨潤することが明らかとなった。また,この二重鎖DNA架橋ゲルは標的DNAや一塩基ミスマッチDNAに対して異なる膨潤挙動を示し,一塩基多型(SNP)認識できることがわかった。一方,抗原抗体複合体を架橋点として導入した抗原応答性ゲルの架橋構造と抗原応答挙動との関係についても詳細に検討し,ゲル構造設計の重要性を示すことができた。 (b)生体分子インプリントゲルの合成 肝癌マーカーとして知られている糖タンパク質(α-フェトプロテイン;AFP)をターゲット分子として用いて,その糖鎖部位を認識するレクチンとペプチド部位を認識する抗体とをリガンドとして用いた分子インプリント法によってAFPインプリントゲルを合成した。このゲルは鋳型分子と同様の糖タンパク質が存在すると収縮するが,類似の糖タンパク質の場合には膨潤して全く異なる応答性を示すことがわかった。さらに,内分泌攪乱化学物質の疑いのあるビスフェノールA(BPA)に対するリガンドとしてシクロデキストリンを用いた分子インプリント法によって合成したBPA応答性ゲルの構造とBPA応答挙動との関係についても検討し,CD含有率の高いゲルほど顕著なBPA応答性を示すことが明らかとなった。さらに,標的DNAを鋳型分子,その相補的DNAをリガンド分子として用いた分子インプリント法によってDNA応答性ゲルを合成した。このゲルは,標的DNA存在下で次第に収縮し,異なる配列を有するDNAに対しては全く異なる応答挙動を示すことがわかった。
|