研究概要 |
重篤な心臓疾患においては,病変部は心臓壁に均一に形成されるのではなく,左心室の内腔側と外膜側の間に,貫壁性の不均一性を生じる.また,高血圧や大動脈狭窄症などの肥大心においては,心内膜側に虚血が偏在し,心内膜下梗塞が生じることが知られている.このように,病変が心室壁に不均一に生じることは,臨床的にも大きな問題である.しかし,このように貫壁性に不均一な心筋病変部の弛緩機能を計測し得る臨床的な診断方法は,確立されたものが見当たらず,MRI Tagging,超音波後方散乱(IB),超音波組織ドップラ・イメージング(TDI)の僅か3つを"その可能性を有するもの"として挙げているに過ぎない.しかし,いずれの手法も十分な空間分解能が得られておらず,頻繁に行われている虚血性心疾患(冠動脈疾患)の治療後の予後を,心機能との関係で評価できる能力を有した方法でもない. 本研究では,心筋の弛緩特性の貫壁性の不均一性を非侵襲的に評価し,局所心筋ごとに診断するための方法と計測システムを開発し,基礎実験によって,精度評価を行うとともに,健常者への適用による基礎的評価,臨床応用によって診断情報を得ることができることを示した. 本年度の研究成果は次の通りである. 1.心臓壁の拡張特性の貫壁性不均一性の計測と2次元平面上での描出できる診断法を実用化するために試作した診断装置を用いて,健常者5名において,基礎データの計測を行って,計測法の評価を行った. 2.物理量が既知の対象に関する基礎評価実験を行うために,実際の心臓を模擬したシリコーンゴムによる球殻を作成し,その弛緩時の特性の計測を行って,本計測法と本システムの評価を行った. 3.被験者のデータを解析する上で新たに生じた問題点を検討し,システムに改良を加え,心筋の貫壁性機能診断システムとして完成させた.
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