研究概要 |
本研究では,廃用症候群の1症状の関節拘縮における関節と筋の変化を検証した.はじめに関節拘縮モデル動物を作成した.9週齢の雄のWistar Ratに、左坐骨神経切断処置を施した。右側は処置をせず、コントロールとした。Ratの下腿三頭筋は処置後30日で著明に萎縮し、膝関節は屈曲位で関節可動域制限を認めた。構築したモデル動物の関節軟骨を用いて、関節軟骨の既知遺伝子type II collagenとaggrecanのRT-PCRによる定量解析を行った.type II collagenは処置側(左下肢)と対照側(右下肢)の間で発現量に有意差は認められなかった.aggrecanは処置群(左下肢)、対照群(右下肢)間で発現量に有意差を認めた.神経原性関節拘縮を生じた関節軟骨に含まれると予測した未知遺伝子については検出できなかった.denervated groupの標本を作製し,軟骨細胞数と軟骨層の厚みの変化を調べた.軟骨細胞数に関して、処置後7〜90日で、平均軟骨細胞数は処置群・対照群共に経時的な増減傾向を認めなかった。関節軟骨の厚さは処置群と対照群間では、脛骨側処置後7,14日以外の処置群の軟骨層の方が厚かった。除神経処置後の軟骨細胞数や軟骨層の構造には殆ど変化が生じないことがわかった。モデルratの腓腹筋の筋萎縮の経時的変化をMRIを用いて観察し、定量的評価方法について検討した。MRIの撮像データから腓腹筋の構造,MRSを用いた骨格筋に含まれるcreatine含有量の変化等について検証した。健常群と処置群間で筋線維径に有意差は見られなかった.筋組織標本から求めた筋線維径の実測値と推計値を比較検討した結果,推計値は実測値と差があった。腓腹筋の単位体積(voxel)当りのcreatine濃度を推計した結果,2群間では処置後8週において有意傾向を認め,処置群のcreatine濃度が減少していた.本研究は関節拘縮に寄与する器官と組織の総合的な評価を行った点で、きわめて有意義であった.
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