研究分担者 |
小林 正子 国立保健医療科学院, 生涯保健部, 行動科学室長 (50262069)
山岡 和枝 国立保健医療科学院, 技術評価部, 開発技術評価室長 (50091038)
大久保 千代次 国立保健医療科学院, 生活環境部, 生活環境部長 (80083731)
梅野 克身 富山医科薬科大学, 医学部・第1生理学, 助手 (90086596)
麻野井 英次 富山医科薬科大学, 医学部・第2内科学, 助教授 (00150128)
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研究概要 |
本研究の目的は脳波ならびに心拍変動の解析から得られる自律神経活動性指標をフィード・バックして睡眠環境を調節するシステムによって、睡眠深度ならびに主観的睡眠の質(睡眠感や過度の眠気)を改善することが可能であることを明らかにすることにある。本年度は、睡眠時の温熱環境への介入によって生じる諸指標の変動を定量した。 本年度の研究の結果、睡眠時の環境温度を変化させることによって、脳波上の睡眠段階(Rechtschaffen(1968))が変化することが示された。相対湿度を50%に保ちながら、睡眠中の環境温度を27℃に固定した場合に比べて、入眠後1時間かけて27℃から22℃に降下させ、その後22℃で3時間固定した場合、睡眠深度が3度以上の睡眠の時間割合が有意に増加したことから、環境温度の制御によって睡眠の質を改善しうることが示された。 一方、睡眠中の環境温度を低下させると、心拍数は変化しないが、心拍変動の低周波数帯域(LF)のスペクトル密度の積分値が小さくなり、その差は室温の低下幅に関連していた。極低周波数帯域ないし高周波数帯域のスペクトル密度積分値(VLF, HF)は今回の環境温度の低下幅では変化が認められなかった。超低周波数帯域(UF)では睡眠経過時間によって環境温度の低下の効果が変化する傾向にあった。 現在、睡眠中の睡眠深度、起床後の認知タスク評価、ならびに主観的な睡眠の質を心拍変動の諸指標(UF,VLF,LF,HF),ならびに動脈血酸素飽和度を含む生理学的指標によって予測する関数を同定する研究を行っている。環境温度による脳波上の睡眠段階の変化と抹消の循環器系に関する生理学的指標との関連性が示唆されており、心拍変動を含む生理学的指標によって睡眠段階の変化を予測できる可能性が示された。同時に、入眠後の経過時間と温熱環境の変化との複雑な交互作用の存在も明らかになった。今後、この交互作用の背後にあるメカニズムを明らかにし、睡眠の質との関係を明らかにすることが重要であることが示された。
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