初年度は、小学5年生男子99名女96名合計195名、そして中学生2年生男子135名女子141名合計276名を対象にして、適切な短距離疾走を選定するために、次のような観点から測定・調査を行なった。 児童・生徒の疾走能力の実態を把握するために、40m、60m、80m、100mのそれぞれの距離を全力で走ってもらい、スタートからゴールまでの疾走をビデオ撮影し、児童・生徒のスタートからゴールまでの速度、歩数頻度、歩幅の変化を分析し、最高速度そのもの、その出現地点、それらに対応した歩数頻度、歩幅を求めた。児童・生徒にとって適切な疾走距離の判断基準として、その運動の「きつさ」としての負荷基準が明確にされていることが求められる。先行研究から、最高速度区間後の持久疾走区間で、最高速度の失速程度が10%以上を越えてさらにゴールまで走らなければならない場合は、その疾走距離は生理的に「きつい」として捉えられている。 その基準に照らし合わせてみると、小学生男子は100m走で80m以降ゴールまでの20mを「きつい」状態で走り続けていたことが判明した。以下同様に、80m走では75m以降5m、60m走と40m走ではそのようなきつい疾走距離はみられなかった。小学生女子では100m走で85m以降の15mが、80m走、60m走、40皿走では10%を越える距離は認められなかった。中学生男子では、すべての疾走距離に10%を越える区間はみられなかった。女子では100m走の95m以降の5mがきつい区間がみられ、100m走は中学生女子にとってはきつい距離であることが判明した。 これらの分析結果を、さらに、主観的運動強度、疾走直後の心拍数の分析結果と詳細に照らし合わせること、同時に各距離に対するイメージをSD法で集計し、それらを因子分析、共分散分析して、児童生徒の疾走距離に対するイメージを明確にすることを現在試みている。この分析結果の一部を、スプリント学会の研究誌に投稿し、掲載された。
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