国民の多くにみられる不活動なライフスタイルでは、安静時に消費するエネルギー代謝量が1日の総エネルギー消費量のなんと約80%を占めている。したがって、この安静時エネルギー代謝量の増減は、エネルギーの収支バランスに強く影響し、結果的に体脂肪量の増加や肥満発症に関連する重要な要因であることが指摘されている。安静時代謝量を決定する基本的な因子として、身体を構成するそれぞれの組織・器官における(1)重量と(2)代謝率の総和であることが報告されている。本研究では、各組織・器官における重量1kg当たりのエネルギー代謝率予測値(一定の基準値)を用いて、実測した各対象者の組織・器官重量から安静時代謝量を推定したが、その推定値は極めて高い精度で実測した安静時エネルギー代謝量と一致していた。また、体重が一般成人の約3倍(約200kg)の大型スポーツ選手においても、安静時エネルギー代謝量は一般成人の約3倍高い値を示し、その差は組織・器官の代謝率ではなく、組織・器官重量の差によるものであることが示された。このような大型スポーツ選手では、高い骨格筋の蓄積を示すだけでなく、脳を除く他の組織・器官(肝臓、腎臓、心臓など)の重量も同様に大きな値を示していた。このことは、骨格筋量の増加には、臓器重量の増加を伴う可能性を示唆していた。一方、骨格筋は安静状態では非常に代謝率が低い組織であるが、一旦活動を行なうと運動強度に比例してエネルギー消費量の増加が観察される。この時、骨格筋1kg当たりのエネルギー消費量の最大値はほぼ一定であり、上肢や下肢による違いも観察されなかった。したがって、運動時のエネルギー消費量は動員する骨格筋量に比例するものと考えられる。レジスタンス・トレーニングによる組織・器官重量の変化と安静時代謝量の関係については、現在、1年半経過時の継続的な調査を行なっている。
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