レジスタンス・トレーニングの効果として起こる除脂肪量の増加は、主に骨格筋量の増加を反映した結果と一般に考えられてきた。しかし、増加した除脂肪量のどの程度が骨格筋量の変化なのか、骨格筋以外の組織・器官重量に変化はみられないのかなど、解明されてない点が多い。本研究では、骨格筋の肥大をもたらす高強度レジスタンス・トレーニングおよび低強度で実施する加圧トレーニングの効果として、骨格筋量の増加に加え、運動に伴う代謝調節に関与する肝臓や腎臓などの内臓臓器重量の変化について検討した。除脂肪量の測定には水中体重秤量法を、骨格筋量と臓器重量の測定には磁気共鳴撮像法を用いて行なった。横断的な研究の結果では、レジスタンス・トレーニングによって骨格筋量が増加したスポーツ選手の肝臓および腎臓重量は、骨格筋量の増加に比例して高まることが明らかとなった。また、この臓器重量の増加がスポーツ選手にみられる安静時エネルギー代謝量の相対値(除脂肪量あたり)の上昇に影響していることも明らかとなった。しかし、縦断的な研究の結果では骨格筋量の明らかな増加は観察されたものの、統計上有意な増加は肝臓および腎臓重量には見いだせなかった。その原因としてトレーニングにともなう臓器重量の変化量の少なさが考えられる。つまり、生体には骨格筋量が通常20〜30kg存在するのに対し、肝臓は約1kg、腎臓は約0.3kgであり、測定に用いた磁気共鳴撮像法がトレーニングにともなう臓器重量の変化を十分に捉えきれない可能性が考えられる。すなわち、トレーニングによる骨格筋量の変化が〜3kgであるのに対し、臓器重量の変化はグラム単位と小さく、磁気共鳴撮像法の測定誤差に隠れてしまうおそれがあるからである。従って、縦断的研究をさらに継続することによって除脂肪量(骨格筋量)の変化をさらに大きくし、その時の肝臓および腎臓重量の変化について今後さらに検討する必要がある。
|