研究概要 |
平成16年度はトレーニングに対する関節柔軟性変化の基礎的データとして,ヒトで数多く指摘のある関節柔軟性の性差に関して実験的に検討した.以下にその成果を示す. <目的> 関節柔軟性の性差は特に前十字靭帯の非接触型断裂が女性において好発することなどから指摘されているが,実験的検討はなされていない.本研究は、平成14年度に確立したラット足関節柔軟性評価系を用いて,ヒトで既に指摘のある関節柔軟性の性差が実験的に確認できるか否かを検討した. <方法> 対象は、Wistar系ラットオス(以下male群,9週齢)8匹,メス(以下female群)8匹とした.体重はmale群で287.32±4.92g, female群で197.13±11.26gであった.関節柔軟性の評価には平成14年度に本研究にて確立した評価系である静的張力(関節角度を固定(15°以下PRT(S15),30°以下PRT(S30))した状態での足底の反力)を用いた. <結果> PRT(S30)は,female群がmale群よりも低値を示し、統計処理の結果有意差が認められた(P<0.001)、PRT(S45)は、female群よりもmale群で高値を示し.統計処理の結果有意差が認められた(PRT(S45):P<0.001). さらに各測定値を体重で除した体重あたりのPRT(S45)は,体重あたりを算出する前の値と同様にfemale群に比べmale群において有意に高かった(P<0.05).PRT(S30)はやはりmale群が高値であったものの有意な差は認められなかった(P=0.101). <考察> 本研究の結果から,ヒトで報告されている関節の柔軟性の性差を実験動物において再現することができた.このモデルを用いることにより女性における非接触型の靭帯損傷の好発に関して,たとえばエストロゲン摂取による関節柔軟性の変化などの実験モデルが提示可能になった.
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