研究概要 |
目的:運動負荷試験中の内分泌反応にアンジオテンシンI変換酵素(ACE)遺伝子多型性の関与が認められるか? 対象者:ACE遺伝子多型のI/I型とD/D型の健常若年者,各6名の計12名。 運動負荷試験中の循環生理応答:(1)1/2LT,(2)LT,(3)OBLA,(4)Maxに相当する運動強度で,それぞれ10分間の多段階運動負荷試験を行った。運動前,各負荷終了2分前,運動終了3分後に,肘静脈からの採血と自動血圧計による血圧測定,心電図モニターから心拍数を測定した。更に,各負荷終了1分前から呼気ガスを測定し酸素摂取量を算出した。 血液検査項目:アドレナリン,ノルアドレナリン,ドーパミン,レニン活性,ACE活性,アンジオテンシンI,アンジオテンシンII,アルドステロン,心房性ナトリウム利尿ペプチド,脳性ナトリウム利尿ペプチド,血中乳酸濃度を測定した。 結果・まとめ:運動前,各負荷の運動中,運動終了3分後のACE活性はI/I型に比べD/D型が有意に高い値を示した。これは先行研究(Rigat et al. J.clin. invest.1990)を追認する結果となった。しかし収縮期血圧,拡張期血圧,平均血圧,心拍数,アドレナリン,ノルアドレナリン,ドーパミン,レニン活性,アンジオテンシンI,アンジオテンシンII,アルドステロン,心房性ナトリウム利尿ペプチド,脳性ナトリウム利尿ペプチド,血中乳酸濃度は,いずれの負荷においても遺伝子多型間で有意な差が認められなかった。我々は血液中のアンジオテンシンIIの濃度が,ACE遺伝子多型に影響されないことを見出し,その成果をアメリカスポーツ医学会にて発表した(Tobina et al.2003)。
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