本年度は、運動に制限がある人々への筋力増強効果と血流促進効果をもたらすトレーニング方法として機能的筋電気刺激(FES)に着目し、周波数選択による生理応答の変化を神経・筋血流の立場から複合的に検討した。刺激周波数は60Hz(高周波)と20Hz(低周波)を用いた。内側腓腹筋に5分×4セット(セット間休息30秒)の表面筋電気刺激を施した。その結果、刺激中の発揮張力は、両周波数時とも低下したが、60Hz時での発揮張力低下率の方が顕著であった(P<0.001)筋電気刺激中の筋酸素量・筋血流量の変化は、60Hz時よりも20Hz時の方がより顕著で、運動に制限がある人々への筋力増強効果と血流促進効果をもたらすには、高周波よりも低周波のFESを用いることがより効果的であることが示唆された。次に、昨年度までに確立された我々独自のプロトコルを用いた低周波筋電気刺激トレーニング(EMS)が、筋肥大に及ぼす効果について下腿三頭筋を実験対象として検討した。トレーニング群、反対の足をコントロール群として、EMSトレーニングを週4-5回、4週間行った。その結果、最大随意収縮力及び筋放電振幅値がトレーニング群で時間経過と共にほぼ直線的に増大した(P<0.01)。MRI画像解析によって求めた筋断面図から筋量を推定した結果、トレーニング群では実験開始後2週間後から、有意に増大した(P<0.01)。以上の結果より、低周波電気刺激トレーニングにより最大随意収縮力が増大し、それらには神経的な適応と筋量の増大が貢献していること、また、その機序が通常の随意筋力トレーニングとは異なることが示唆された。この研究により、低周波筋電気刺激トレーニングを運動に制限がある人々やII型糖尿病患者に対する運動療法として用いることで、早期の筋肥大を惹起し、それらが糖代謝改善に寄与する可能性が十分にあることが示唆された。
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