研究概要 |
1.年代測定の実施 土器に付着する炭化物について,加速器質量分析計(AMS)による年代測定を行った。炭化物が海産物に由来する場合,海洋リザーバー効果により測定結果が期待される年代よりも古くなることがあるため,考古学的な見地からその妥当性について解釈を行った。海産物は炭素13の同位体比(δ^<13>C値)が高くなる傾向にあるため注目したが,AMSによるδ^<13>Cの測定は試料調製に難があり高い精度は望めない。 2.安定同位体比の測定 炭化物の炭素・窒素比(C/N)およびそれらの同位体比(δ^<13>C,δ^<15>N)の測定を依頼分析により行った。同一遺跡から出土した同一形式の土器に付着する炭化物について,期待される年代よりも古い値が得られた試料にδ^<13>Cの高いものがあり,海産物の影響を確認できた。C/N比とδ^<15>Nとの間には,窒素が多くなるほどδ^<15>N比が高くなる傾向にあり,炭化物に動物性タンパク質の影響を見ることができた。 3.炭化物の組成分析 FT-IR,およびイオントラップ型質量分析計により炭化物の組成分析を行った。全反射減衰(ATR)法によるFT-IR測定は,セルロースに特徴的なスペクトルを見いだすことができた。質量分析計では脂質などの揮発成分の検出を期待したが,直接導入により明瞭なスペクトルは得られなかった。15年度に導入したGC-MSを用い,揮発性分の抽出,分離を行った上で再度分析を行う予定である。
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