研究概要 |
1.松本盆地において糸魚川-静岡構造線活断層系を横切る反射法地震探査断面と重力探査データの解析を行った.その結果,(1)鮮新世〜第四紀の盆地堆積物とその東の中新世の岩石との境界は東に傾斜する(深部ではかなり低角となる)断層面であること,(2)牛伏寺断層は,この断層の上盤側から派生する高角東傾斜の断層であることがわかった.地表変形データからみて糸魚川-静岡構造線は全体として横ずれが卓越するから,断層面の配置は現在の広域応力場下での最大剪断方向とは大きく異なる.これは,糸魚川-静岡構造線の断層面強度がきわめて小さいことを示唆している. 2.2003年7月26日,宮城県北部地震(M6.4)の震源域において反射法地震探査測線を実施し,そのデータを解析した.反射法地震探査測線は,この地域の主要な地質構造である南北走向の断層に直交する方向に沿って設定した.また,この測線に沿う重力データの解析も行った.以上の解析の結果,(1)石巻湾断層のほぼ北方延長に相当する位置に顕著な断層面が認められること,(2)この断層は西傾斜であり,上盤側の中新統はこの断層に向かって厚くなる構造を示すこと,(3)断層の東側にはやや厚い第四紀層が存在し,その下位には中古生層と推定される高密度の岩体が存在することがわかった.以上の結果から,地下に伏在する宮城県北部地震の震源断層は,中新世に生じた正断層を起源とし,それが現在逆断層として再活動したものであると推定される.
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