研究概要 |
本年度は小笠原諸島母島にてサンゴ礁のボーリング調査を行った。小笠原諸島のボーリング調査にあたっては地元調整・各種許可取得に3年近くを要し,2007年1月に調査にこぎつけることができた。母島東港の南岸に分布するサンゴ礁で,まず,潜水調査によって水深20mまでのサンゴ礁の測量・表層堆積物の採取を行った。水深20m以深は砂質堆積物が主となり,礁岩は殆どみられなくなる。礁岩の分布域は種子島地域の北限礁よりも深くまで広がっている。次に,水深5m地点で潜水による水中ボーリングを行い,4.8mのコアを採取した。コアは上層部2mが原地性サンゴ相よりなり,それより下位4.5mまでは未固結砂層,4.5m以下がサンゴ礫となる。堆積層の層厚も種子島地域の北限礁より厚い。小笠原諸島のサンゴ礁は平面形では非常に小規模であるが,分布水深・層厚ともに大きく,琉球列島北部の北限礁とは異なる。現在,コアの構成物の解析・年代測定を実施中である。 また,本年度は昨年度,四国南西部柏島・種子島・馬毛島・小宝島に設置した9個の自記録温度計の回収・交換を行った。2005〜2006年の冬季海水温は四国柏島で16.5℃まで低下する。一方,種子島・馬毛島では礁原部で13℃まで,潮間帯で6.5℃まで低下した。黒潮の流軸にあたるトカラ列島小宝島では冬季海水温の低下は20.5度にとどまる。種子島地域ではより北に位置する四国南西岸より冬季海水温が低く,完新世中期のサンゴ礁形成時と現在とで海洋環境が異なる可能性が考えられる。
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