研究概要 |
琉球列島中,大きな島である沖縄島と石垣島では,6800〜7200cal BPに遡る表層の完新世サンゴ礁が形成されているが,小さな島である座間味島では,それらは約4000cal BPを示し,新しい年代を示す。表層の完新世堆積物が6500〜7000cal BPまで遡る地域では,大きな島によるハイドロアイソスタシー効果+その地域特有の地殻変動が加わったと推測される。ただし大きな島である西表島では後者の要因が加わっていない。隆起地域の沖縄島南部では,約8500cal BP頃にサンゴ礁が上方に堆積を開始し,約6300cal BP頃までに第1期のサンゴ礁が形成された。その後,約4000cal BP頃までに第2期のサンゴ礁がその沖側に形成され,約2000cal BP頃から第3期のサンゴ礁が更に沖側に形成された。これら3列のサンゴ礁の中で最も古いサンゴ礁は南部の海岸沿いに形成されているが,中北部に向かうに従い,代わって第2期〜第3期のサンゴ礁が礁嶺を形成していることが判明した。 1771年明和津波以前の津波については,河名・中田(1994)の未較正値を暦年代に較正した結果,約500,1000,2000,2400cal BP頃の大津波の襲来が想定される。それらの津波の発生要因の1つと推測される海底逆断層と石垣島での北西への傾動運動との関係が示唆される。明和津波の遡上高については石垣島での津波襲来後の新村の位置を検討した結果,約30〜35mの最高遡上高を再確認した。奄美大島での約3400cal BP頃の大津波を推測した。円形の島における津波の回折を多良間島と黒島に適用すると,北海岸への堆積物の集中現象が説明可能になった。沖縄島と周辺島における約3400cal BP頃の大波の襲来を推測し,1832年の台風や1951年のルース台風などの高波による岩塊の移動も明らかにした。
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