研究課題
基盤研究(B)
本年度は、19世紀気象観測記録の収集と分析を中心に研究を進めた。現在入手できる最も古い観測記録は、1818年の長崎出島におけるオランダ人医師らによる記録で、1883年まで一部欠測はあるが、毎日の観測記録が残されている。これらをすべてデジタル化するとともに、現在の気象庁による観測記録と連結させるための、補正と均質化を行い、データベース化した。さらに、神戸大学塚原研究が中心となって、全国各地の図書館・資料館等を調査した結果、長崎以外に、東京、横浜、大阪、神戸などで日本人による19世紀中期の気象観測記録を収集することができた。これらについても、長崎出島の記録と同様に補正と均質化を進めている。東京(江戸)の観測記録については、デジタル化と補正・均質化の作業が終了し、データベースが完成している。東京と長崎については、1700年〜1860年の長期間にわたる日記天候記録が研究代表者らによってデータベース化されており、降雪率や降水日数に基づいた気温の復元が試みられている。そこで、東京と長崎において、日記天候記録と気象観測記録の重なる期間(1870年代以前)について、観測データと日記天候記録による気温復元値を比較したところ、両者は相関の高いことが明らかになった。また、1828年9月17日深夜に長崎に上陸したとされる「シーボルト台風」に関して、出島の観測記録を調べた結果、上陸時の最低気圧が952hPaであることや、日記天候記録の全国天気分布から台風の強度や経路が1991年の大型台風19号と類似していることも明らかになった。
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