研究課題/領域番号 |
15310002
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長尾 誠也 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助教授 (20343014)
|
研究分担者 |
児玉 宏樹 京都府立大学, 農学部, 助手 (60305563)
藤嶽 暢英 神戸大学, 農学部, 助教授 (50243332)
山本 正伸 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助教授 (60332475)
|
キーワード | 難分解性有機物 / 腐植物質 / フミン酸 / フルボ酸 / 溶存有機炭素 / 懸濁態有機物 / 河川水 / 移行動態 |
研究概要 |
本研究の目的は、重要ではあるがデータの蓄積に乏しく、季節や地域によりその変動幅が大きく、沿岸域での炭素の吸収と放出量の見積もりを行う上で不確定要素の1つと考えられている河川から海洋への有機体炭素の移行量と移行動態を検討するものである。そのために、寒冷、温帯、および熱帯域の河川を対象に、河川流域の特性、植生、気候による土壌での有機物の分解と生成機構・時間スケールと河川により供給される有機物の特性、移行量との関係を難分解性有機物である腐植物質に着目して調べる。平成15年度は泥炭地を有する十勝川、湿原を流れる別寒辺牛川、褐色森林土の久慈川、スコットランド、ウクライナ、インドネシアの河川水中の溶存腐植物質を非イオン性の多孔質樹脂XAD-8を用いた分離法により分離生成し、いくつかの特性について分析を行った。また、河川水中の有機物の起源と移行動態推定のために、放射性炭素および炭素安定同位対比を測定し、両者を組み合わせた新しいトレーサー手法を検討した。 十勝川においては、4月から1〜2ヶ月毎に1〜6測点で水質の測定とともに溶存有機物の濃度、蛍光特性測定用の河川水を採取した。また、9月には下流域の茂岩橋で河川水中に溶存している腐植物質の分離精製操作を行った。河川水440Lからフミン酸291mg、フルボ酸834mgを回収することが出来た。別寒辺牛川では11月に河川水100Lを採取し、上記の方法により腐植物質350mgを分離濃縮できた。他の河川についても同様な分離精製操作を行った。これらの流域特性等の環境が異なる河川水中の溶存腐植物質について、放射性炭素および炭素安定同位対比を測定した。その結果、放射性炭素(Δ^<14>C)は-214〜+180‰の範囲で変動し、土壌での溶存腐植物質の滞留時問が流城環境により大きく異なることが考えられる。 上記の検討と平行して、今年度に購入した連続高速遠心機により、河川水約100Lから懸濁粒子を分離し、放射性炭素および炭素安定同位対比を測定した。その結果、久慈川では年間を通してΔ^<14>Cは-19〜-94‰、炭素同位対比(δ^<13>C)は-24.0〜-31.1‰の範囲で変動し、流域の環境条件の違いにより変動していることが明らかとなった。 以上の結果から、放射性炭素および炭素安定同位対比を組み合わせる新しいトレーサー手法は、河川の流域環境の違いを反映し、移行動態および起源推定のために活用できる可能性が示唆された。
|