研究課題/領域番号 |
15310002
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長尾 誠也 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 助教授 (20343014)
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研究分担者 |
山本 正伸 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 助教授 (60332475)
藤嶽 暢英 神戸大学, 農学部, 助教授 (50243332)
児玉 宏樹 京都府立大学, 農学部, 助手 (60305563)
入野 智久 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 助手 (70332476)
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キーワード | 河川 / 炭素循環 / 粒子態有機物 / 溶存有機物 / 腐植物質 / 炭素同位体 / 土壌有機物 / 降雨 |
研究概要 |
本研究の目的は、重要ではあるがデータの蓄積に乏しく、季節や地域によりその変動幅が大きく、沿岸域での炭素の吸収と放出量の見積もりを行う上で不確定要素の1つと考えられている河川から海洋への有機体炭素の移行量と移行動態を検討するものである。 平成17年度は、十勝川、石狩川において1ヶ月に1回河川水を採取し、連続遠心法により約60Lの河川水から懸濁態有機物を分離し、加速器質量分析器で^<14>Cを測定した。その結果、石狩川では5月中旬の雪解け終了時にΔ^<14>Cが-300‰とかなり古い(現在から約3000年前)有機物が移行し、雪解け前後では-200‰程度を示した。また、夏に-170‰と新しく形成された有機物の寄与が示唆される変動傾向であった。同様な傾向は平成16年の観測でも認められた。流域環境が異なる十勝川においても、雪解け時期に低く(-177‰)、雪解け後の初夏に高いΔ^<14>C値(-111‰)を示した。天塩川、釧路川でも雪解け時の増水期に低いΔ^<14>C値であった。以上の結果より、雪解け時期の河川水流量が増加し、懸濁態有機物フラックスが増加する時期には、流域環境によらずに、見かけの年齢が現在より約1500〜3000年前に生成した有機物が移行していることが明らかとなった。ただし、Δ^<14>C値の変動幅は河川毎に異なっていた。 十勝川では降雨後に約1週間にわたり下流の定点で観測を継続し、降雨の影響を調べた。その結果、粒子態有機物のΔ^<14>C値は-352‰〜-316‰と雪解け時期に比べても低い値を示した。これらのことは、流量増加時に河川により輸送される懸濁態の有機物はいずれも古いが、異なるΔ^<14>C値を示すことから、雪解け時期とは必ずしも同じ起源の有機物ではないことを示唆している。
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