研究概要 |
アジアの大気環境問題は世界で最も重要な環境問題の一つと考えられる。さらに将来的に、エネルギー消費の増大、産業構造の変化、土地利用の変化に伴う大気質の激変が予想されることから、アジアにおける大気環境の将来変化を予測し定量化することは緊急かつ重要な課題である。しかし、その重要性に比して、アジアにおけるエアロゾルや対流圏オゾンなどの大気汚染物質の将来動向を予測した研究は極めて少ない。このような背景のもとで、本研究では以下の点を明らかにすることを目的とする。 (1)アジアにおける将来のエネルギー消費動向、産業構造変化、土地利用変化を予測し、化石燃料燃焼、工業プロセス、農業プロセス、自然を起源として発生する各種の大気汚染排出量を推計する。 (2)大気組成変動予測シミュレータを開発し、アジアにおける対流圏オゾンとエアロゾルの将来変動を予測して高分解能の化学気候予測図を作成する。 本年度は、将来2010,2020年のアジア域における排出量予測結果をもとに、大気組成変動予測シミュレータを使用して、大気環境の将来予測を行った。その結果、(1)中国における2020年のNOx排出量は、2000年に較べて約40%増加すること、(2)これに伴って東アジアにおけるHNO_3濃度は25%,NO_3^-濃度は38%、それぞれ増加すること、(3)日本においても、HNO_3濃度は9%,NO_3^-濃度は31%、それぞれ増加すること、(4)地表オゾンも、九州地方では夏季に10%程度増大すること、などが明らかとなった。
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